今の子供達が生きていくほんの少し先の未来、どうなっているのでしょうか?
2020年以降、日本は超少子高齢化社会になり、市場も社会も「大縮小時代」に突入します。 現在の社会保障は、約3人の労働力で1人の高齢者を支えるという仕組みですが、超少子高齢化社会では、1人の労働力で1人の高齢者を支えなければなりません。つまり、個人のパフォーマンスを3倍にあげるか、もしくは労働力を増やさない限り、現在の社会保障を維持することができなくなります。また、5年後には、日本の消費者層の割合が、アジア全体の1%弱になると言われています。だから、子どもたちが大人になったとき、日本で「モノ」を売ろうとしても、そもそも売る相手がいないという状態になってしまいます。
だから、今の子どもたちが社会で活躍するためには、日本だけで仕事をするのではなく、海外に出て行くかしか、選択肢がなくなってしまうかもしれません。
これまで、世界の産業の中心は、農業から工業、そして情報へと変移してきました。ブロードバンドが整備された現在の「情報社会」では、誰でも簡単に無料で、膨大な数の情報を手に入れることができます。携帯電話の販売台数は70億台を超えていますが、これは世界中の人が1人1台、携帯電話を持っているという計算にです。つまり、水や電気といったインフラが整っていない貧しい国の人々でさえ、携帯電話を通して膨大な情報にアクセスできるということ。世界中の人々が、誰でも簡単に無料で情報を手に入れられる。ということは、情報そのものの価値はどんどんなくなっていってしまうということです。
そして、情報そのものに価値がなくなったとき、新たに始まるのが「知識創造社会」です。「知識創造社会」とはつまり、どれだけ有益な知識を創造できるかが、産業の中心となる社会のこと。 たとえば、日本でも主流になりつつある、クラウドファンディングでは、アイデアそのものに金額がつきます。また、たった1つのアイデアから、 世界的な企業が生まれることも。Google社やFacebook社が、学生のアイデアから生み出されたことは、よく知られているはずです。
これからの社会は、知識を創造することが、仕事になっていきます。つまり「知識創造社会」の主体は、私たちの脳。だから、「知識創造社会」において、もっとも重要なのは教育になります。それは教育によって主体となる脳の価値を高めていかなければならないからです。
現在の教育現場では、旧来の詰め込み教育が主流です。でも、「知識創造社会」では、詰め込まれた知識だけではやっていけません。言われたことをただ正確にこなすだけなら、ロボットの方が優秀です。ロボット産業がどんどん盛んになってきている今、将来的にはほとんどの仕事をロボットがこなすようになるのではないかと言われています。
たとえば、昨年のモーターショーで、自動運転できる車が話題となりました。実用化されれば、きっとタクシーの運転手に取って代わる存在になります。ただ運転をするだけなら、ロボットでも、人間でも変わらないし、むしろロボットの方が安全で効率的かもしれません。それでは人間の役割は? それは「知識を創造すること」です。活動エリアにどれくらいのお客さんがいて、何台のロボットを導入して、どんなサービスをするのか……。まさに「脳」を使うことが、ロボットにはできない人間だけの仕事になっていきます。
だから、これからの「知識創造社会」では、言われたことをただこなせるようになるだけの教育では生き残っていけません。大切なのは、知識を創造して活用することです。
「知識創造社会」に必要な教育のテーマとして、私たちは「アーキテクチャル思考」というものを掲げています。「アーキテクチャル」とは「建築の」という意味を持つ言葉です。建築家が家を建てるとき、まず行うのは想像すること。家を建てる土地の特性や住む人たちのニーズなど、さまざまな要素を精査して、理想の家を想像します。すなわち、イマジネーション力をつかいます。そして、イメージした理想の家をつくり上げるために、構造を計算し、一つひとつ組み立てていく、という論理的な思考も必要です。つまり、建築家が家を建てるうえで必要なのは、理想を「描く力」とそれを「実現する力」です。そして、その土台となるのが自分を信じる力。自分を信じる力を持たないと、変化のめまぐるしいこれからの社会で行動し続けることはできません。自身が行動の原動力となるからです。
「知識想像社会」において重要なのは、まさにこの「描く力」と「実現する力」そして「自分を信じる力」です。勉強はもちろん、ビジネスやスポーツ、芸術の分野でも、想像力と実行力を併せ持っていることが、これからの社会で生きていくための重要な要素なのです。我々Future Lab.では、「アーキテクチャル思考」=「描く力」「実現する力」「自分を信じる力」をこれからの社会を生きていく人々への教育を通して伝えられるよう、様々な教育コンテンツを開発し、発信していきます。